大判例

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東京高等裁判所 昭和54年(う)773号 判決

被告人 白石千久馬

〔抄 録〕

所論につき判断するに先立ち、職権をもって調査するに、原判決は、罪となるべき事実の第二として「昭和五三年一二月二二日付追起訴状(但し、公訴事実第三の三行目「ほか三点」とあるを「ほか四点」と訂正されたもの)」を、同じく第三として「昭和五四年一月二四日付追起訴状」をそれぞれ引用していることが、原判文上明らかである。ところで、原判決が引用する昭和五三年一二月二二日付追起訴状(原裁判所昭和五三年(ろ)第五四三号、以下「起訴状(二)」という。)は原審記録3、4丁(原審が付した丁数による、以下同じ。)に、同じく昭和五四年一月二四日付追起訴状(原裁判所昭和五四年(ろ)第一四号、以下「起訴状(三)」という。)は原審記録6、7丁にそれぞれ編綴されているところ、右各起訴状はいずれも、現に編綴されている状態のままでは、その一枚目の裏末尾から二枚目の表冒頭に至る公訴事実の記載の文脈が続かず、かつ、一枚目裏と二枚目表の各上部欄外に押捺されている検察官の契印が符合しないことが明らかであり、そこで、右各起訴状自体によって認められる一枚目裏末尾から二枚目表冒頭にかけての公訴事実の記載の文脈の続き具合い、各丁間の契印の状況、各起訴状の作成日付及びこれらが原裁判所で受理された日付等を精査し、原審記録中の証拠等関係カードの「公訴事実の別」欄等の記載を勘案し、当審で取り調べた裁判所書記官作成の電話聴取書を併せて検討すると、起訴状(二)はもともと原審記録3丁の用紙の次に同7丁の用紙を綴り合わせ、また、起訴状(三)は原審記録6丁の用紙の次に同4丁の用紙を綴り合わせ、それぞれ二枚綴りの一通の書面として各作成日付の日に原裁判所に提出されたのに、同裁判所でこれらを受理して保管中、いったん右各起訴状の綴りを解いたうえ復元するに際し、右各起訴状の二枚目の用紙を取り違えて編綴し、そのまま原審記録中に綴り込まれたものと認められる。したがって、右の乱綴の点は右各起訴状による公訴提起の効力には何らの影響をも及ぼさないが、原判決は、右各起訴状を引用するにあたってその乱綴の点については何ら言及するところがないばかりか、証拠の標目の項において、起訴状(二)の公訴事実は第一ないし第三の三個の訴因から成り、起訴状(三)の公訴事実は第一ないし第六の六個の訴因(なお、第四ないし第六の各訴因は原審記録7丁に記載されている。)から成るものとして、各訴因ごとに証拠の標目を掲げていること等に徴すると、原判決は右各起訴状が現に乱綴されている状態のままでその記載の各公訴事実を引用したものと解するのほかはない。そうだとすると、起訴状(二)の公訴事実第三に対応する原判決の罪となるべき事実は結局、「被告人が、昭和五三年一〇月三一日ころ東京都世田谷区代沢三丁目四番四号柴田博彦方において、同人所有の指輪二個ほか四点(時価合計一三万円相当)を窃取し、セット一台(時価五万円相当)ほか二点を窃取し」たというにあり、また、起訴状(三)の公訴事実第三に対応する原判決の罪となるべき事実は結局、「被告人が、昭和五三年一一月一四日東京都中野区若宮一丁目八番八号斉藤繁一方において、同人所有のステレオ」(以下の記載がない。)というにあることとなり、いずれも窃盗の罪となるべき事実の摘示としては、はなはだずさん、不十分なものであるといわざるを得ないから、原判決には右の点で理由不備の違法があるのみならず、原判決が起訴状(二)の公訴事実第三に対応する原判示事実について掲げる関係証拠によれば、被告人が原判示日時場所において窃取した物件は、原判示被害者所有の指輪二個のほか四点(ネックレス二個、ブローチ一個、指輪一個)だけであって、原判示の「セット一台ほか二点」を窃取した事実は全くないことが認められるから、この点において原判決には理由そごの違法があるものといわざるを得ず、原判決は右各罪を含む原判示第一ないし第三の各罪を併合罪として一個の刑を科しているから、原判決中右の各罪に関する部分は、所論に対する判断をまつまでもなく、破棄を免れない。

(新関 下村 小林)

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